Q356★理科研究で鉄釘を(1)コーヒー、(2)お茶、 (3)スポーツドリンク、 (4)砂糖水、(5)食塩水、(6)水道水、(7)酢、(8)炭酸水、(9)ミネラルウォータ、(10)リンス、(11)シャンプー、(12)油に一週間つけてみました。(1)と(2)は液体が真っ黒になりタンニン鉄の液体になったとわかりましたが鉄釘自体は錆びると言うよりは黒っぽくなっているのですがこれは鉄がどういう化学変化を起こした状態なのですか?
(1) (2) (3) (6) (8)の釘は黒っぽく変化したのは黒錆が出てきてると言えるのですか? また(4) (5) (7) (9) (10) (11)は赤っぽく変化したのですが赤錆と考えて良いのですか? (11)は取り出した時、変化はなかったのですが取り出して2日後には赤錆だらけになりました。空気に触れた事で酸化が始まったって事でしょうか?
(12)につけた釘が(11)の釘とは違い、取り出してからも変化しなかったのは何故でしょうか?

まず、鉄のさびについて少しお話しますね。

「赤さび」とは、主に鉄が酸化されて生じるオキシ水酸化鉄(III)、化学式で書くとFe2O3・x H2Oのことで、鉄(III)イオンのみを含みます。一方、「黒さび」とは、四酸化三鉄、化学式で書くとFe3O4で表される物質のことです。この化合物に含まれる鉄は金属の鉄から電子が二つ奪われてできる鉄(II)の状態と三つ奪われた鉄(III)の状態の両方のものが含まれています。

 さて、今回、コーヒーやお茶などタンニンを含む液に鉄釘をつけた場合、釘自体が黒くなった、とのことですが、2つの可能性が考えられます。1つ目は、上記の「黒さび」ができている可能性です。この場合には、水と酸素により生じた鉄(III)イオンの一部が、タンニンから電子を受け取り鉄(II)イオンになったためと考えられます。2つ目は「タンニン鉄」が鉄釘の表面に付着して覆っている可能性です。タンニンは、ポリフェノールと呼ばれる化合物群の総称であり、特定の化合物の名称を指すものではありません。タンニンと鉄の化合物には水に溶けるものと溶けないものがあり、今回、溶けないものが表面に付着している可能性があります。2つの可能性のうち、どちらであるのか(あるいは両方)は、専門的な分析をしてみないとわかりません。ただし、世間では両者の見た目が似ており、どちらもさびの進行を食い止める働きがあることから、どちらも「黒さび」と呼んでいる場合があります。従って、見た目が黒くなった場合には「黒さび」、赤っぽく変化した場合には「赤さび」と言っても構いません。

 次にシャンプーと油の場合の違いですが、小学生の質問コーナー Q123中・高生の質問コーナー Q301にもあるように、鉄が「さびる」ためには、水と酸素の両方が必要です。まず、油には水が含まれませんのでさびません。油から取り出した鉄釘の表面に油の薄い膜があれば、水が鉄釘の表面に近づくのを防げるためさびなかったと考えられます。一方、シャンプーには水が含まれています。でも、どろどろした液体であるため酸素が動きにくく、鉄釘の表面から遠い距離にある酸素が鉄釘に近づくのには時間がかかるためほとんどさびなかったと考えられます。この鉄釘をシャンプーから取り出した状態ではシャンプーの膜が薄くなったため、空気中の酸素が鉄釘の表面にたどり着きやすくなり、さびたと考えられます。
上記の2つのページのほか、
小学生の質問コーナー Q188も参考にしてください。

(YM & NN) 2017/08/14