Q153★氷のとけかたについて調べました。黒い絵の具をとかしたもの、白の絵の具をとかしたもの、黄色の絵の具をとかしたもの、赤の絵の具をとかしたもの、あと炭酸飲料、お茶、レモンティー、普通の水道水、トマトジュースを同じ量ずつ凍らせてみました。凍らしたものをお皿に入れ、日光のあたるところにおいて、とける時間をはかってみました。そうすると炭酸飲料、黒の絵の具、黄色の絵の具、赤の絵の具、レモンティー、お茶、白の絵の具、水、トマトジュースの順番でとけました。どうしてこのような結果になるのか理由をおしえてください。

  
それはね…

水に何かが入っていると、何も入っていない水にくらべて、氷になる温度も、その氷がとける温度も低くなります。つまり、何も入っていない氷は0℃でとけますが、何かが入っている氷は0℃より低い温度でとけるため速くとけます。氷がとけて水になる温度は入っているものの量によって決まります。この量は重さではなく、「モル」という化学で使う単位ではかります。

「入っているものの量」の説明例えば、氷をバスに置きかえて考えてみましょう。バスの中に体重30Kgの子供だけなら100人乗ることができるのに、体重60Kgの大人は50人しか乗ることができません。
でも、乗っている人の体重の合計はどちらも3000Kgで同じです。重さが同じでも、乗ることのできる人数はちがいますね。
この回答にでてくる「(モルとしての)量」というのは入っているものの「重さ」ではなく「数」(上の例では人数)と思ってください。
氷のとけかたを考えるときは「重さ」ではなく「数」が大切になります。
そう考えて回答の文章を読んでください。

つまり、氷のとける速さは
(1)「水にとけているものの(モルとしての)量」に関係します(量が多いほど速くとけます)。

また、氷がとける速さは、
(2)「太陽からの熱の受け取りやすさと伝わりやすさ」にも関係してきます。例えば、鉄やアルミニウムのような金属は熱を伝えやすいですが、木のようなものは金属よりも熱を伝えにくいです。

これらのことを考えると、今回の実験は、理由(1)と理由(2)がどれだけ関係しているかによって分けて考える必要があると思います。
<グループ1> 炭酸飲料、お茶、レモンティー、普通の水道水
<グループ2> 絵の具をとかした水
<グループ3> トマトジュース
の3つのグループに分けて考えてみましょう。

<グループ1>については、理由(1)「水にとけているものの量」と理由(2)「熱の受け取りやすさと伝わりやすさ」の両方を考えなければなりませんが、理由(1)の方が大きく関係していると思います。つまり、これらの飲み物の中に糖類や果汁などの成分の量(正しくはこれら全部の「モル」量)が多いほど、速くとけます。一般に、紅茶よりも炭酸飲料には多くの糖類が溶けていますし、最近の紅茶は糖分が少ないのがありますが、それでもお茶よりもとけているものが多いのではないかと思います。また、理由(2)の「熱の受け取りやすさと伝わりやすさ」は、<グループ2>で説明するように、それぞれの「色」で違うことがありますが、それほど変わらないと思います。

<グループ2>の「絵の具」グループについてですが、こちらは理由(2)の「熱の受け取りやすさと伝わりやすさ」が大きく関係しています。水にとけているものの量(つまり絵の具の量)が同じであっても、色が違うと日光からの熱の伝わり方が違うので氷がとける速さが違ってきます。黒色は光を吸収しやすい色なので、日光を当てると光のエネルギーを一番効率よく受け取るため、一番速く温かくなります。黒色の次は、黄色が、その次は赤色が光のエネルギーを受け取りやすいので、この順番になります。
そして白色は光を反射しやすい色なので、光のエネルギーを効率よく受け取ることができません。そのため白の絵の具をとかした水で作った氷が絵の具のグループの中で一番遅くとけたと考えられます。それでも水道水から作った氷よりも速くとけて液体になるのは、<グループ1>の理由と同じで、白の絵の具が水に溶け込んでいるためです。

<グループ3>のトマトジュースについてですが、これは水よりもとけるのが遅いということで、他の2つのグループと反対のことが起こっています。トマトジュースには水にとけていないものがたくさん入っていることに理由があると考えられます。トマトジュースは、ものが全て水にとけた「水溶液(すいようえき)」ではなく、水と水にとけないトマトの成分が混じった「混合物(こんごうぶつ)」です。ここで、水にとけていないものが、水よりも熱を伝えにくいものだったり、水と結びつきやすい(かなり難しいですが、これを「弱い結合(けつごう)」や「相互作用(そうごさよう)」と言います)ものだったりすると、とけるのが遅くなります。

トマトジュースは水とトマトの「混合物」なので、凍らせると氷というよりも「シャーベット」状になります。同じようなシャーベット状になる野菜ジュースなどと比べてみるのも面白いでしょう。


小学生の質問コーナーのQ105, Q133, Q136, Q144 中高生の質問コーナーのQ66回答も参考にしてください。

(KK, TO & MS) 2008/08/16